※このSSは≪反省室グラヴィア集≫の続きです。


 電源を点けたばかりのコタツのなかは、妙に寒々しい。
 元来短気なおれは、温度調節のツマミを最大にまでねじった。
 小さなコタツなので、足を少しでも伸ばすと正面に陣取った相手の足に当たってしまう。
 なので彼女のつま先が、さっきまで外にいたせいか、靴下越しにも冷え切っているのがわかった。

「なにか焦げくさい臭いがする……。だ、大丈夫なのか?」
 太めの眉毛を心配そうに寄せて、向かいに座った委員長が聞いてきた。

 少年のようなボブに、きりっとした眉。洒落っ気のない丸眼鏡の上、私服は地味な色調でユニセックスなものを好んで着ている。さらに男っぽい口調に、毅然とした態度を取っているため、学校では頼れるが堅物の委員長だと思われている。
 しかし二人きりのときは、か弱いところやダメな部分をわりと無防備に見せてくる。
 周囲を漂うコタツの電熱線が発する異臭に、形のいい鼻をひくひくさせていた。

 ……ああ、この臭いか?
 ウチのコタツは『最強』にするといつもこういう臭いがするんだ。それより寒くないか?

「うん、平気だ。外から帰ってきたばかりで、体感的には暖かいから」
 そういいながらも委員長は、少し身じろぎをした。室内にも関わらず、茶色のコートを着たままだ。全体的に脂肪の少ない彼女の身体は、体温の上がりもゆるやかなのだ。
 おれは暖房のスイッチも入れた。

 これでよし。
 ほら、これ。親戚が比喩表現抜きに腐るほど送ってきたミカンなんだ。小ぶりだけど、甘いぞ。

「ありがとう」
 机の上に置いてあった取り皿から、委員長はミカンを取った。
「ああ、本当に甘いな。キミの入れてくれたココアも……芯から温まるようだ」
 おれたちの目の前には、入れたばかりのココアもカップから湯気を立てていた。
 ミカンには合わなかったかな、と思いつつも、先ほどまで息が凍りそうなほど寒い外にいたせいか、二人とも熱いココアを舌が火傷しないようにゆっくりと飲む。

 窓の外は、しん、と静まり返って、物音一つもしない。
 そしておれたちは、甘すぎるココアの入ったカップを口元に持っていったまま、見つめ合ったり、ちょっと顔を下に向けたり。


 なんとなく、無言の時間が続く。


 うぅ……に、苦手だ、こういう雰囲気。

 な……なぁ、委員長!

「……ん」

 妙に気恥かしくなったおれの声は、ちょっと調子が外れていた。
 委員長も、ココアの影響か、ようやく暖かくなってきたコタツのおかげか、頬がほんのりと赤くなっている。
 思わず抱きしめたくなるが、なんとか自重する。

 いや……まあ、遅ればせながら、その、なんだ……。

「うん」

 ……明けましておめでとう。

「明けましておめでとう」




≪棒と証拠と犯人≫




 【い】犬も歩けば棒に当たる



 おれと委員長が付き合いだして数か月が経った。

 最初のキッカケこそ、エロ本を没収するのしないの、巷の恋人たちに見られる甘かったり酸っぱかったりする一般的な出会いとは程遠いものではあった。
 しかし、文化祭やらクリスマスやら、諸々のイベントを通過してきたおれたちを甘く見てはいけない。
 今では立派に、手と手を取って二年参りに行くような、ザ・日本のカップルみたいなことをしている。

 ……まあ、そういうのに慣れていなかったおれと委員長だ。いまだに、照れが抜けないのは、我ながら恥ずかしいと思う。

「そういえば……」
 委員長はミカンを一袋一袋、丁寧に剥きながら、きょろきょろと部屋の中を見回した。
「ご家族はどこにいらっしゃるんだ? 新年の挨拶をしておきたいのだけど」

 ああ、あいつらか……。
 いない。

「……いない? そうか、まだご参詣をしているのか」

 違う。
 実は年末の商店街の福引でな、一等を当てたんだよ。おれが。

「それは運が好い」

 そうだな。
 で、それが『ご家族四名様ご招待。新年・海の幸食べ放題、温泉ツアー二泊三日』というなかなか豪勢なものだったんだが……。

「“ご家族四名様”……?
 キミの家は確か……」

 ああ。
 おやじ、おふくろ、弟に婆ちゃん。四人なかよくカニでも食ってんだろうさ。こんなクソ寒い時にわざわざ北陸でな。うん、全然悔しくないね。たださ、この無造作に机に置いてあった“お年玉”はどうだろうね。ようは三日分の食費ってことじゃねえか、ちくしょう。

「え、えっと、それは……残念だったね」

 いいさ。
 おかげで委員長と二人きりで新年を迎えられたしな。

「ふなっ?! ばかものっ……い、いきなり、何を……」

 なんだよ。
 委員長は嫌だったのか?

「そ、そんなことはないっ! その、わたしも……うれしい、ぞ」
 おでこまで真っ赤にして、おれから視線を外し、しかしちょっと横目で見てくる委員長。
 やっぱり抱きしめてもいいのではないだろうか。

 ……。

 えーっと。
 その、そうだ。
 委員長こそ、家族といっしょに過ごさなくていいのか?

「……」
 委員長はぴくりと肩を震わせた。

 あ。
 これは、間違った、か?

「父は2週間前からアメリカだ。母も、仕事がとつぜん入って……。
 二人とも忙しいから。これは仕方がないことだし、わたしも慣れているよ」

 おれは何もいえず、じっと彼女の顔を見つめる。

「そんな顔をするな。電話をもらったときは……嬉しかった。本当に、心から」
 そういって、委員長はにっこり笑った。

 ……まずい。

 なんか、色々な感情が交じって、ちょっと涙が出そうだ。

「……あっ、そうだ! ご家族がいないと三が日、なにも食べるものがないだろう?!」
 再び部屋に落ちた沈黙に、委員長はなにかごまかすような明るい声を出した。
「わたしも家にいてもすることがないから。お節は難しいけど、なにかご飯を作りに来るよ。
 キミが、嫌じゃなかったら……だけど」

 嫌なわけないだろう。

 おれは即答し、さらに付け加えた。

 それに、三日間も委員長と二人っきりだ。新年から幸先いいじゃないか。

「ふふ、本当だ。二人きりだね」

 そうそう。
 委員長と、おれと……。

 二人っきり……だな、うん。

「二人、きり……」

 誰もいない家で……。

「……」

 ……。


 三度、そして、本日最も重い沈黙が部屋を支配した。

 おれは黙って、じっと卓上のミカンの山を見つめる。
 委員長も一言もしゃべらず、手もとのカップの水面に映った自分とにらめっこしていた。

 冬休みが明けるまで、このまま固まっていそうだった。

 最初のうそ寒さから一転。現在、ガンガンに作動しているコタツに入っているおれたちの額に、汗の玉がぷくりと浮かび始めていた。

 お互い、なにもいいだせず、顔も見れずに、たっぷり一分は経った頃だろうか。


 どんっ!!


 とつぜんの静寂を破った物音に、おれは飛び上がりそうになった。
 派手な音を立てて、コタツの天板がわずかに浮き上がり、ずれた。
 皿に積まれたミカンの山が崩れて、ころころと床に転がり落ちた。

「……っ、熱ぅぅぅっ!!?」
 いままで黙ってコタツに当たっていた委員長も、なぜか身をよじって、七転八倒している。

 お、おい?! だいじょうぶかっ!!

「うぅぅ……うううーーっ!!!」
 狭いコタツのなか、委員長の足がバタバタと揺れ、卓上のカップの中で飲みさしのココアが激しく波打つ。
 委員長の急変に、慌ててコタツから飛び出す。

 座イスをひっくり返し、背泳ぎみたいなかっこうで空中クロールしている委員長の姿は滑稽だったかもしれないが、おれは心配で笑うどころではない。

 おい、委員長暴れるな!
 なにがあったか知らんが、余計に出られなくなるぞっ!!

 仰向けになって暴れる委員長は、コタツから必死に這い出そうとしていた。しかし、なにか引っ掛かって出られないようだ。色白の肌を真っ赤にして、痙攣していた。

 コタツが熱くなりすぎたのか?!

 スイッチを切る間も惜しく、乱暴にコードを引っぱり電源を断つ。
 しかし構造上、コタツ内の温度は急には下がらない。
 ビクン、ビクン、と天井を向いて悶える委員長の側に駆け寄る。
 コートのわきに手を入れた。
 そのまま、力いっぱい委員長をコタツから引きぬく。


 ごりごりごりっ……!!


「ひゃうううううぅぅぅっっ?!!!」
 西洋の妖術伝説に出てくる薬草マンドラゴラのごとく、引き抜かれる瞬間、委員長は甲高い悲鳴をあげた。
 なにかがコタツに当たって擦れる鈍重な音がして、コタツの中から委員長の足がずるずると出てくる。

 委員長の肌は湯あたりしたみたいに上気して、おでこには無数の汗の玉がにじんでいる。
 細い四肢が、電気を流された昆虫みたいに、ぴくぴく痙攣している。
 そして、厚めのコート越しにもわかるほど。

 委員長の股間は勃起していた。

 ……。

「ハァ……ハァ……」

 熱い吐息をもらして天を仰ぐ委員長を、おれはやや冷たい視線で見下ろしていた。

 誰もいない彼氏の家で二人っきり、という状況に委員長の下半身はたぎりを抑えきれなかったらしい。
 そして、ふたなりレベルでは標準的なサイズだが、太さ長さ共におれのものの数倍は優にある、巨大な肉棒を、コタツの低い天井にぶち当ててしまったわけだ。

 ……ふぅ。

 おれは小さくため息をついた。
 一連の流れのあまりのくだらなさに、すごいスピードで先ほどまでの甘いムードが霧散していく。

 まったく……。
 委員長、立てるか?

「う、うん。すまない……」
 おれの手を取って、委員長はよろよろと立ちあがり。

「あ、コート! 焦げてないかっ?」
 そして、慌てて下を向いた。

 茶色のコートにぴんとテントが張っている。ひざ丈まであるものだが、勃起したせいでズルズルと捲りあげられ、下から白のチノパンが腿までのぞいている。
 そして、委員長の怒張したものを優しく包む伸縮性に富んだチノパンに出来た、ぷっくりとした股間の膨らみ。
 繊維業界の技術の進歩と、着衣越しにもわかるふたなりチンポの造形美に素直に感動する。

「そ、そんなにじっと見つめて……やっぱり、焦げ目が残っているか?」
 上から委員長の心配した声がかかる。

 そんなに高いコートなのか?

 委員長の股間に目が釘付けのおれの頭に、ふと疑問がよぎった。

 ん?
 あ。これは……。
 寒がりの委員長に、おれがクリスマスにプレゼントしたやつだ。
 やべ……今、気づいた。

「せ、せっかくキミが買ってくれたのに……すまない……」
 委員長の声が震えている。

 いや……だいじょうぶみたいだ。
 焦げた臭いがするのはウチのコタツの仕様だ。安心しろ。

 汗をたらりと流しながら、表情をさとられないように委員長の股間に視線を固定する。

「よかった……。
 抜かれたとき、コタツのヒーターの部分で思いっきり擦って、まるで火傷したみたいに感じたから……」

 ……なに?
 火傷だと?!


 次の瞬間。

 おれは目にもとまらぬ早業で、委員長のコートのボタンをはずし、チノパンとショーツを引きずりおろしていた。


 ぶるん……!


 さぞ、窮屈だったことだろう。
 素晴らしき存在感を持った肉棒が勢いよく飛び出し、おれの頬をぴしゃりと打った。

「……って、いきなりなにしているんだ、このばかものぉぉぉぉぉぉっ?!!!」
 一瞬の内に、コートの下から肉棒をのぞかせた、露出魔よろしくの格好になった委員長が叫んだ。

 剥き出しになった委員長のふたなりチンポは、いつ見ても美しい。……いつもだったら、彼女のチンポを称える言葉を十行にわたって重ねていくのだが、今はそんな場合ではない。

 委員長!
 チンコはどうだ?! なんともないのかっ!!

「ぇ、えぅっ? えっと、うん、擦ったせいで、ちょっとヒリヒリするような……」

 くそっ! やはりかっ!!



 はむっ


 ためらうことなく、委員長の勃起したペニスを口に含む。

「ひゃうううっ?!!」

 おれの口の中に、むっ、と委員長の陰部から発せられる妙なる匂いが広がる。
 濡れた亀頭と鈴口のしょっぱい塩味が、舌をぴりぴりと刺激する。

 委員長の巨根は、亀頭だけでもかなりの質量があるので、飲みこむのは大変だが、そんなことをいっている場合ではない。
 口いっぱいに頬張って、舌を使って丹念に海綿体をねぶる。
 そのあいだにも、委員長の陰茎は柔軟性を比較的に維持したまま膨らんでいき、おれの口内で変幻自在に形を変えていく。

「んにゃぁっ、あふぅぅっ……!! くしゅ、くすぐったぁぁ……あぁぁっ、ぺろぺろなめないでぇぇぇっ!!」
 下からあがってくる快感に、上半身の力が抜けたらしい。委員長はくの字になって、おれの頭頂部に手をついた。
 腰を引いて、必死でふたなりチンポをおれの口から引き抜こうとする。
 おれの口から、なめかけのアイスキャンディーのような光沢をした、委員長の肉棒がずるずると抜かれていく。

 しかし。
 献身的な舌技によって、くわえた時よりもかなり大きくなった陰茎は、万国旗を口から無数に出す手品みたいに、なかなか全貌が現れない。
 途中で、委員長のカリ首がおれの歯に引っかかった。

「いっ?! い、いいい、い、うううううっ、んんんーーーーーっ!!!」
 びくびくと、委員長の引けた腰が震える。必死で嬌声を押し込めようと、ぐっ、と固く閉じた口の端から、よだれが一筋こぼれた。
 それでも堪えきれずに、声が漏れる。
「にゃ、あふ、なんでぇっ……なんでぇぇぇっ?!!」
 恥じらいと快感の涙を眼に浮かべ、委員長はにらんできた。

 なんでこんなことを、と聞きたいのだろう。
 目だけ上にやって、委員長の問いに簡潔に答える。

 ひゃふぇほひははひははいほ。

 彼女の肉棒をはみはみしながらなので、ほとんど言葉にはならなかったが。

「ふわっ、あふっ!! や、“やけどしたら冷やさないと”って……ひゃんっ! ば、ばかものぉぉぉぉっ!!!
 だからってなんでっ、くわえる必要が、あるぅぅぅ、ぅあぁぁあぁっ?!!!」

 しかし、最前述べたが、カップルとしていろいろと経験を積んできたおれたち。
 尺八したまま会話する技術もまた身に付けていたのである。

「んあぁぁぁぁっ、だめっだめだめぇだめだぁぁぁぁっ、いっちゃうううううぅぅぅぅっ!!!!」
 そうこうしている内に、委員長も限界をむかえていた。
 および腰の姿勢で、必死で射精に耐えていたが、内またになった脚がビクビク震えていた。
 玉袋がきゅっと縮み、八割がた口の外へ飛び出していた肉棒が、亀頭部分をくわえているおれの目の前で激しく左右に揺れた。


 どくっ、どくどくどくどくっ!!!!


 委員長の鈴口から熱い飛沫がほとばしる。
 甘酒のように真っ白に濁った、どろりとした液体がおれの喉にブッカケられた。
 うら若き乙女の精嚢で、人肌の温度で燗をつけた美酒を、おれは音を立てて飲み干していく。


 ごくっごくごくっ……!


 だが、男の射精量をはるかに上回るふたなりミルクをすべて飲み干すのは至難の業だ。
 ちゅるん、とおれの唇を擦って、放水真っ最中の肉棒が外へ飛び出す。


 びしゃびしゃ、べちゃ、べちゃっ


「ああっ、いやぁぁ……!!」
 委員長は恥じらいで真っ赤になった顔を両手でおさえながらも、いきり立った肉棒からは白濁を止めどもなく吐き出し、逸れることなくおれの顔面へ当ててくる。
 おれも顔をそむけることなく、熱い、どこまでも熱い真っ白なシャワーを、真正面から受け止める。

 新年・初顔射だった。


 それから。
 おれがティッシュで顔をぬぐっている横で。

「い、いつにもないほど甘い雰囲気だったのに……だったのにぃぃ……うぅぅぅっ!」

 よよよ、と泣き崩れている委員長。
 最初に甘い雰囲気を崩した張本人。
 まだ甘勃ちしているチンコを放り出したまま、めそめそしている。

 いつもなら五分は愛でるところだが、なにはさておき、日本の宝に傷ひとつでも残っていないかどうか確認しなければならない。舌での応急処置ぐらいで安心してはいられない。

 おれは、しゃがみこんで委員長の股間を観察する。
 手に取った。
 なでてみた。


 ……。

 ……っ?!

 なんてことだ……!

 たいへんだ、委員長っ。

 先っぽが真っ赤だ。それに、すごく熱くなってるぞ!


「ぜんぶキミのせいだろぉぉぉぉぉぉっ?!」

 いきなり身を起した委員長に怒鳴られた。
 なぜだろう。




 【ろ】論より証拠



 委員長……。
 寒くないか?

「さ、さむいに、きまっているだろう……」
 扉の向こうから、エコーがかかった委員長の声が返ってきた。
 寒さに歯の根が合っていない。

 あのあと。
 真っ赤になって詰め寄る委員長を説き伏せ、おれは彼女に患部の治療をすすめた。
 ちょっとヒーターが熱く感じただけだ、と最初こそ渋っていたものの、おれの真剣な顔と火傷の初期治療の重要さを説く熱弁に、委員長もわかってくれたらしい。

 そして現在、一糸まとわぬ姿の委員長が、薄い扉ひとつ隔てて、おれの家の風呂場にいる。

「うう……本当に、ここまでする必要、あるのか……?」
 腰まで水を張ったバスタブに浸かっているので、委員長の声は限界までか細くなってふるえている。

 ああ。寒いだろうが我慢してくれ。
 場所が場所だけに、細心の注意を払わないと。

「い、いや……でも、なんか、感覚が、なくなってきた、ような……」

 なっ……なにぃぃぃぃっ?!!


 ばたーん!!!


「ぇぅっ?! きゃああああああああっ!!!?」

 だいじょうぶか委員長! 立て委員長っ!! はやくたつんだ委員長ぅぅぅっ!!

「の、ノックぐらいしろばかものぉぉぉっ!!!」

 ええいっ、そんなこといってる場合かっ!

 風呂場に乱入したおれの目に、水を張った浴槽のなかで縮こまり、両腕で胸を覆っている委員長の肢体が映った。
 おれは少し乱暴に委員長の片腕をつかみ、「ひゃぁぁぁっ?!」、残った手で必死に微乳を隠している彼女を水風呂のなかから引きあげた。

 すると眼前には、水を滴らせ、生まれたままの姿で、委員長が立っている。

 水風呂から引きあげる際に激しく暴れるという、猫とはまるで逆の行動を取った委員長。
 頭から水がぽたぽたと垂れ、なだらかな胸を隠している腕に当たって、弾けて、色白の肌を濡らす。
 きっと寒さのせいだろう。全身が小刻みに震えている。
 おれの視線の先にある、脚のあいだに垂れさがったモノも連動して震えている。
 無残にも、袋はホオズキみたいにしぼんで、竿はボールペンくらいにまでサイズダウンしている。
 凍傷で切断することになった登山家の話が脳裏によぎり、おれはぞっとした。
 火傷の危機は去ったようだが、さらに重大な事態を招いてしまったようだ。
 もはや、一刻の猶予もない。
 おもむろにぶら下がった委員長自身をつかむ。
 ひっぱった。
 力なくのびてしまったので、今度はすこし捻じるようにして、刺激してみる。
 こすってもみた。
 すると、今まで氷のように冷え切っていた表皮の下から、ほのかに熱が伝わってきた。
 心臓から血が送られてきたのだ。
 全体がムクムクと膨らんできた。
 おれは思わず安堵のため息をついた。
 MAXサイズには程遠いが、機能停止はしていないようだった。
 晴れ晴れとした笑顔を浮かべ、ぶるぶる震えながら黙ったままの委員長を見上げる。

 よかったな、委員長。

「なにが“よかった”だっ、このばかものっ!!!!」


 げしぃっ!!


 ……ぐはぁっ?!

「ばかものっ! ばかものぉぉっ!!!」


 げしっ!! げしっ!!!


 ちょっ、まっ、ぐえっ!! 委員長っ、ギブっ! ストップ!!

 とつぜんキレた委員長は、涙目でおれを足蹴にしてくる。
 全裸のまま、かなり激しいストンピングをかましているため、委員長の股の間では肉棒がブラブラと激しく揺れている。

「キミはっ、いつもっ、そうだっ!!
 とつぜん優しくなったりっ、マジメになったりしてっ、わたしをドキドキさせてっ!!
 そして、すぐに下半身の方にもっていくんだっ! このスケベ! ヘンタイっ! 女の敵っ!!」

 怒りでチンコを半勃起させながら、感情の昂ぶった委員長はかなり本気でおれを蹴ってくる。
 いまだかつてないほどの委員長の爆発に、驚いたおれは防御もままならない。

 とつぜん、蹴りが止んだ。

 ぼろぼろになっていたおれは、恐る恐る委員長を見あげる。
 委員長はもはや自分の裸体を隠すことも忘れ、両手で顔を覆っていた。

 あ……。

 おれはようやく冷静になってきた。
 クラスでは委員長、委員長と呼ばれて、頼りにされる存在の彼女。
 しかし、おれは知っていた。
 彼女の強さは、生来のものじゃない。
 立派な仕事をしている両親、忙しくて家を空けることの多い両親。
 小さい時から、ひとりで過ごすことの多かった彼女は、強くなるしかなかった。
 尊敬する両親を失望させないように、自分を律して、強く振舞うしかなかった。
 学校でも馬鹿騒ぎするおれたちみたいな生徒から、一歩身を引き、委員長としての役割を全うしてきた。
 そして。
 多分、委員長が初めて、自分の心の柔らかい部分をさらけ出してもいい相手として選んでくれたのが、おれだった。
 それを、おれは……。

「っ……ぅぅっ」
 手で顔を覆ったまま、まだ委員長は小刻みに震えている。

 彼女に蹴られ、くしゃくしゃになった上着を正し、立ち上がる。
 ジーンズのポケットからハンカチを取り出した。そして、委員長の方へ手を伸ばす。


 がしぃっ!


 差し出した手が、委員長にがっしりとつかまれた。

 え……え〜っと……?

「ぅぅ……うふふっ……。ふふ、ふふふっ……!」

 委員長の片手はおれの腕をものすごい握力でつかみ、残り一方の手は顔を覆い、その隙間から地の底から響いてくるような不気味な笑い声が漏れてくる。……嗚咽では、なかったようだ。

 ……あのぉ、イインチョー? なに、笑ってるんでしょうか? それに、腕めっちゃ痛い。血流とまってるって。

 しかし、おれの問いを無視して、委員長はヒクヒクと痙攣的に笑い続けている。

「ふっふっふ……! き、キミがその気なら、わたしにも考えがある……」

 びっしょり水に濡れた裸体を拭きもしないまま、風呂場の敷居をまたいで、そのまま廊下へと向かう。
 もちろん、おれの腕をひっぱりながら。

 い、委員長。おれを、どこへ連れて行く気なのでしょうか?

「……」

 しかし、委員長はまた黙りこくって、ずんずん歩いていく。
 廊下のフローリングに、委員長の濡れた裸足が、ぺたぺたと跡を残していく。
 委員長はその細身からは想像できないほどの馬鹿力を発揮し、不安と心配の面持ちのおれをどこか知らない場所へと連行していく。

 ぴたりと歩みが止まった。
 おれの部屋の前だった。

 ふだんは人一倍マナーを重んじる委員長が、ノックも本人の承諾もないまま、勝手にドアを開け、おれをマイルームの中に引きずり込む。
 電灯を点けていないので、部屋は真っ暗だった。

 す……

 きつく握りしめられていた委員長の手が、腕から離れた。

 ……委員長?

 暗闇に目が慣れていないので、おれは委員長の姿を見失っていた。
 きょろきょろ、周囲を見回していると。


 どん!


 背中を強く押された。
 つんのめったおれの前にはベッドがあり、バランスを崩してマットレスに手をついた。

「はぁ……はぁ……」

 暗闇のなか、委員長の荒い息遣いが聞こえてくる。
 そして、おれのジーンズに彼女の細い指がかかる感触がした。

「い、いつもキミに流されるままの、わたしだと思うな……」

 委員長が静かに呟いた。そして。


 ずるぅっ!


 やおら乱暴にジーンズを引き下された。
 剥き出しになった両足に、暖房のかけていなかった部屋の冷気が、ひんやりと感じられた。
 つまり、ベッドに手をついた姿勢のまま、おれは委員長にトランクス一丁の尻を向けている状態だ。
 ぎゅうっ、と爪が食い込みそうなほどの力で委員長に尻をつかまれているので、おれは恐る恐る顔だけ後ろに向けた。

 半開きの扉から漏れこむ居間の灯りで、暗闇にうっすらと委員長の肢体が浮かび上がっていた。

 肌に浮いた水滴が、かすかな光を反射して、きらきら光っている。
 逆行のため表情はよく見えないが、鋭い眼光ははっきりとわかった。普段はすこし垂れ目ぎみなのだが、眼鏡を外しているせいか、険悪に細められているようだ。褐色の瞳には異様な光が浮かんでいた。
 痩せぎすの委員長は、鎖骨が人よりはっきりと浮かんでいる。鎖骨のデルタに水がたまって、燐光を発しているのが見えた。
 鎖骨から溢れた水が、つつ、と垂れて緩やかな山なりのカーヴを描く。流れた水滴が、放物線の突端……つん、と立った乳首に引っかかった。
 コロコロと転がった他の水滴は、わずかに浮き出た肋骨に軌道を変え、小さく切れ込んだ臍にいったん吸い込まれるようにして消える。すぐに満杯になり、水滴がこぼれだし、また滑らかな肌を下へと伝っていく。
 そして、しっとり水で濡れた陰部に合流する。
 下腹部から、いつのまにか、芯でも通したみたいに、一直線に肉の棒が伸びている。
 やはり、たくさんの水滴をまとっている。
 太い血管が陰茎の上部を走り、それに沿って川のように水滴が流れていく。
 さきほどまで水風呂に浸かっていた亀頭の突端から、表面張力の限界を超えた水滴が、ぽたりぽたりとこぼれて、おれのトランクスを濡らしていく。
 尻がヒヤリとして、おれは思わず身をすくませる。

「はぁはぁ……ふふっ、今、キミのお尻が緊張で硬くなったね……。
 わたしがなにをするつもりか、もうわかってるようだね?」

 ……いつのまにか。
 トランクスを断続的に濡らす天からの滴が、生温かい、ねっとりとしたものに変わっていた。

 わ、わかってるってナニをだ?
 それより委員長、全身ずぶ濡れで風邪ひいちまうぜ?
 この部屋は暖房も効いてないことだし……ほら、まずは身体を拭いてお風呂を沸かして、落ち着こうぜ、なっ?

 しかしおれの提案に、ぴったりと濡れた前髪をおでこに張り付けた委員長は、ひきつった笑みを浮かべた。
「はぁ……はぁ……ふっ、ふふふっ……心配ない、心配ないよっ。
 キミは、極寒に住むイヌイットが凍傷にかかったとき、アザラシの体内に入って治す……という話を知っているかい?」

 ……オーケー、委員長。いいたいことも、したいことも、きっぱり明確に理解した。
 だが、ちょっと待て。やるのはかまわないが、一応それなりの準備があってな。その、ほぐしてもらうとか、ローションを使うなりしないと。
 って……? 
 っ、あぐぅぅぅぅぅぁぁっ??!!!!!

「ご、ごちゃごちゃとうるさいっ! 男のくせに、こ、こんなエッチな肛門をして……っ!!
 なにもしないでも、お、おちんちんを飲みこんでいくじゃないかっ!!」


 めり、めりめりっ……!


 トランクスを脱がされたかと思うとすぐに、おれの肛門に熱い亀頭がもぐりこんでいた。
 異物の侵入に、おれの肛門括約筋は内外問わず、随意不随意関係なく、きゅっ、と縮まる。
 だがその反射作用も、握りこぶしほどある亀頭を包み込むようにして、いい感じの力で委員長の肉棒をかえって奥深くへと誘っていく。

「へ、ヘンタイのキミはわたしのコレが大好きなんだろっ?! わたしの、おちんちんにしか……興味がないんだろっ!!
 ならっ、思う存分っ、ねじこんであげるよっ!!!」


 ぎちっ ぐりぐりっ!!


 腰をひねりながら、委員長はたぎる肉棒をおれの体内に打ち込んでいく。尻をつかむ指に力がこもり、少女のような肢体が全身、きゅっ、と締まった。

「ふ、ふふっ! わたしのモノをこんなにしっかりつかんで……っ! 男のくせにそんなにおちんちんが好きなのかっ?!
 はっ! 本当にヘンタイだな、キミはっ!」
 びくびくと収縮する男の肛門に己の肉棒を咥えられ、委員長の声は快感と征服感が入り混じった調子で上ずっていた。いつにない口調で言葉責めをしてくる。
 おれはといえば、痛みと苦しさになにもいえず、ベッドに顔から突っ伏していた。しかし、おれの股間は熱くなり、勃起を始めていた。潜り込んだ委員長の亀頭が、なかから前立腺を圧迫していたのだ。

「んんっ、キツくて……熱い……っ!! こんなの、はじめて……っ!!」
 熱に浮かされたような委員長の声。
 キツいのは何の前戯もなく挿入したからで、熱いのはさっきまで水風呂に浸かっていたから余計そう感じるのだろう。


 ぐ、ぐぐぐっ……!!


 長物を肉穴に埋め込まれ、後ろからの圧力に、おれの身体はベッドの上へと押し出されていく。
「だめっ! 逃がさない、よ……っ!!」
 ベッドに四つん這いになったおれに、委員長は覆いかぶさってきた。
 水を滴らせ、ひんやりとした彼女の肌が、おれの身体に押し付けられ、上着をびしょ濡れにする。
「っ! ……、ははっ、キミのも硬くなっているようだ……!」
 嘲るような、感動したような、昂ぶった声が耳元でささやかれた。
 おれの腰にしがみつくような格好になった委員長。回された彼女の手が、勃起したおれのものに触れていた。
「ハァ……っ、な、なら、もう、遠慮はしないよっ……」


 みちっ みちみちっ!


 苦しさで喘ぎながらも感じているおれの痴態に、委員長は興奮したらしい。
 すでに八割がた入り込んだ委員長の肉棒が、さらに膨張し、おれの直腸を変形させていく。

「キミが……泣いて頼んでも、もう、やめてあげないからっ!!」

 委員長は叫ぶと、残りの肉棒を一息に射しこんできた。


 ぱぁんっっ!!!


 小気味よい、肉と肉がぶつかりあう音がした。
 打ちつけられた委員長の腰が、完全におれの臀部と密着している。
 水に濡れてしっとりと肌に張り付いた委員長の恥毛が、おれの臀裂の上部に押し当てられている。
 そして腿の付け根あたりに、ぎゅっと押し付けられているのは……。

「ぁ、あにぃぃぃぃぃぃゃぁあぁっ?!!!!」
 委員長は奇声をあげて、痙攣を始めた。

 ……激しく腰をおれの尻に打ち付けたとき、風船のように膨れたフタナリ金玉もまた痛打してしまったらしい。
 毬のような彼女の玉は、二人の腿のあいだに挟まれ、ぐにゃり、と偏平にひしゃげていた。


 じゅぶぶぶぶぶぶっっ……!!!


 おれの腸内が、燃えているみたいに熱くなった。
 絵具をしぼりだす要領で、たっぷり中身の詰まった玉袋のなかから多量の精液が絞り出され、腸内射精を続ける。

「ふわっ?! あぁぁぁっ、ううううぅぅぅぅん……っ!!!」

 委員長はおれにしがみついたまま、睾丸強打の痛みと到達した快感とで、ビクンビクンと全身を震わせている。
 射精機能が壊れてしまったみたいに、挿入されたままの委員長の陰茎からだくだくと、おれの直腸に精液を送り込んでいく。
 圧倒的な量を体内でぶちまけられ、おれの腕から力が抜け、尻だけ上げたまま枕に顔を埋めるような姿勢になった。顔だけなんとか後ろに向けると、肩を激しく上下させ呼吸を荒くしている委員長が見えた。

 ……だ、だいじょうぶ、か?

 一回の射精で下腹部がたぷんと膨れ上がり、巨大な女根に直腸を占拠され、息をするのも辛い。
 しかし、なにもいわずに、ぶるぶると痙攣したまま腸内射精を続ける委員長が心配になって、思わず声をかけた。

「ふぅー……ふぅぅ……っ。
 へ、平気だ……ちょっと、玉が攣ったような気がしただけ、だ」
 委員長は息も絶え絶えに答えてから、はっ、と身を硬くした。

「そ、そんなことより、自分の身を心配しろっ!
 キミはわたしに……お、犯されてるんだぞ!?」

 いや、そうかもしれんが……。苦しいけど、気持ちよくなってきたし。
 いつもヤってることと、あまり変わらない気がしてきたんだが。

「くっ……! な、なら、もっと、キミが壊れるぐらい、やってやるっ!!」
 そして、委員長はおれにしがみついたまま、腰だけを勢いよく動かし始めた。


 ぱんっ! ぱんっ!


 暗い室内に、委員長のピストン運動の音が響く。

「はぁっ、はぁっ! うぅぅぅっ……どうだ?! さすがにっ、もう、余裕はないだろっ!
 ……え? ま……まだ、股間をこんなに硬くしてっ! ど、どこまで、キミはっ……ああんっ!!」
 首筋に委員長の熱い息がかかる。
 ベッドが揺れるほどの激しい抽迭に、おれの上着がわきの下までめくりあがっていく。
 すでにふたなりミルクいっぱいになったおれの直腸を、委員長の肉棒がさらに徹底的にかき回していく。ズボズボと彼女のチンポが抜き差しされるおれの肛門から、ひっきりなしにザーメンやら腸液やら、汁が飛んでシーツを汚す。

「ああ、キミの中が、ぐちゃぐちゃで、熱くてっ、わ、わたしの方が先におかしくなりそうっ!!」
 ぎゅっ、と委員長は快感地獄に耐えるかのように、しがみつく力を強くした。すでに彼女の意思とは別に、下半身がガクガクと動き、おれの肛門をえぐっていく。
 おれの背中を、水風呂で冷えた委員長の肢体がごしごしと擦って、体温を貪欲に奪っていく。摩擦運動で彼女の肌はだんだんと熱を持っていく。普段の存在の希薄さを取り返すかのように、微乳がおれの背面にぴったりと押しつけられ、その犯罪的な柔らかさでもって、水滴や汗をたんねんに塗りこんでいく。

「でるっ……! また、でちゃうぅぅっ……!!」
 ぐぐっ、と脇の肉に委員長の爪が食い込んだ。


 どぱどぱどぱどぱどぱっ……!!!


 すでにタプタプになったおれの直腸に、熱い精液が押し込まれていく。せり上がって、胃にまで達していきそうな感覚だった。

「〜〜〜っっっ!!!」

 二度目の射精の瞬間、ひときわ激しい一撃を肛門から臍の奥にまで打ち込まれ、おれの腰が落ち、ベッドにうつ伏せになった。その上にオンブバッタみたいに乗っかって、おでこを肩に、胸を背中におしつけたまま、委員長はドパドパと射精しつづけている。

 ベッドに押し付けられたおれの陰茎は、ますます硬くなって、カウパーをだだ漏れにしていた。
 窒息しそうな息苦しさと肛門刺激のオーガズムに、脳が痺れて、おれは何も考えられない。奥深くまで挿しこまれ、貫かれた状態で、全身が緊張で締まって、精管も収縮しきって、射精ができない。
 おれの身体は例えていうなら、自分のと委員長のを合わせて、すでに2リットルは精液が詰め込まれている人間コンドーム状態だ。
 一刻も早く多少なりとも、排出しなければ、おれの頭はどうかなってしまうかもしれない。
 おれは息子を扱こうとしようとしたが、脱力した委員長が上から全体重をかけているため、ベッドに深く埋まって、つかむことすらままならない。
 委員長をベッドから落とさないように慎重に身じろぎし、彼女の身体の下から抜け出そうとした。
 だが……。

「はぁ……はぁ……。まだ、だ……まだ、ゆるすものか……っ!!」
 射精後の一時的な脱力状態から抜けたらしい。
 ふたたび、委員長の腕に力がこもった。
 おれの身体に、細い腕が二匹の蛇のようにからみつく。


 じゅぶっ……!


 強く締め付けられ、おれの下腹部に溜まった彼女の精液が、肛門と陰茎の接合面から漏れた。
「に、二度とっ、わたし以外の女に欲情できないぐらいっ、滅茶苦茶にしてやる……ぅっ!!」
 蝉のようにしがみついたたままの姿勢で、器用に腰を動かし、委員長は交合を強要してくる。おれは潰れたカエルみたいな声をあげながら、彼女の下で悶え続ける。

 かはっ……! おれは、委員長以外の女には興味、なんてっ、ないからっ……!
 もう、い、イカして、くれっ……!!

「嘘をつくなぁっ!!」


 ぎちぃぃっ!!!


 委員長は肉棒を叩きつけるように、抉りこませてきた。
 勃起してもかなり柔らかい委員長の海綿体が、おれの直腸に揉まれ、ぐねぐねと形を変えながら折れ曲がって、S字結腸にまで到達していた。身体の奥で、ビクビクと震えながら、彼女の亀頭から早くも先走りの汁が迸り、粘膜にブッカケられる。
「わ、わたしがっ、委員長のわたしが何も知らないと思っているのか?! 学内でのキミの破廉恥な行為を!!」

 そんなっ、なんのことだ、よ……! おれは、おまえ以外にはだれも……!

「うるさいっ! 隣のクラスの男子生徒からっ、まだっ、あの猥褻な雑誌を、購入してるだろうっ!!」

 そ、それはっ……あぐっ!!!

 もはや何も聞きたいことはない、とばかりに委員長は激しく身体をぶつけてくる。
 怒りとリビドーとが入り混じり、興奮の極みにある委員長の身体は燃えるように、熱い。肌に浮いた水滴と汗が蒸発し、冬の乾燥した空気を湿らしていく。
 股間から生えた圧倒的な質量の肉塊で、おれの奥深くまで入り込み、押しつぶしていく。小柄な委員長の身体を、おれはまったくはねのけることができない。

「ヘンタイのキミは、誰のだっていいんだ!! キミはわたしが好きなんじゃない! ふたなりのおちんちんが好きなだけだろ!! そうだろう!?
 こんなに……こんなにっ、ぎゅうぎゅうに締めつけてっ!! キミの肛門が、なによりの証拠じゃないかっ!!」

 誤解だ……っ!
 おれは叫びたかったが、委員長の抽迭は勢いを増していき、喉からはただかすれた息しか出てこない。

「……だったら……だったらっ、キミのお腹をわたしの精液でいっぱいにしてっ、他の女のおちんちんのことなど考えられないようにしてっ……ああぁぁんっ!!!」


 どばっ……じゅぷぷぷぅぅぅ……!!


 極点に達した委員長が、抜かずに三度目の腸内射精をする。ザーメン満杯の管の中、チンポ全身を汁の中に浸しながらの発射だった。
 おれのお腹がぐるぐると鳴り、直腸に溜まった白濁が沸騰したように泡立っているのがわかる。腹いっぱいに溜まった精液の水位がグングン上がっていき、口から逆流しそうになる。  ついに、精も果てたか。
 委員長の腕から、ふっ、と力が抜けて、肛門からずるりと肉棒が引き抜かれる。そのまま横向きにベッドに倒れこんだ。シーツの上に放り出された肉棒から、奥に残っていたザーメンが、どろり、と垂れた。
 ようやく解放されたおれの身体も、ぐるり、と横に回転し、委員長と向き合うような形になる。激しい交合でふやけきった肛門から、だらり、と彼女の精が漏れた。

「はぁ……はぁ……っ」

 裸体をぐっしょり濡らし、委員長は荒い息をついている。圧迫から自由になったおれの陰茎から、びゅっ、と精液が飛んで、彼女のお腹のあたりに付着した。



 十五分後。
 シーツにくるまったまま背を向ける委員長に、おれは声をかけていた。

 なあ、委員長……もう落ち着いたか?

「……」
 委員長は何も答えず、シーツのなかで身を縮めた。

 ずっとこんなやり取りが続いている。
 あの後、息が整い始め、交合の熱から冷めてきた委員長は、おれの顔と自分の身体を見て、耳まで真っ赤にしたかと思うと、ばっ、とシーツで裸体を隠し、向こうをむいてしまったのだ。
 汗とか流さないと気持ち悪いだろ、とおれは何度も委員長の体を揺さぶったりしたが、その度に手を撥ね退けられ、強情にこちらとは視線を合わせようとはしない。そのうちサナギよろしく、シーツに潜りこんでしまった。
 仕方がないので、おれはぐちょぐちょになった衣類を洗濯機に放り込み、全裸のままトイレに行ってから、軽くシャワーを浴びた。
 着替えを済ませ、戻ってきてもまだ、サナギ状態の委員長は丸くなったまま1ミリも動いていなかった。
 すっぽり頭までシーツにかぶさっているので、表情は見えないが、拗ねているような恥じらっているような、そんな雰囲気を全身から発している。

 はぁ……。

 おれはため息をひとつ吐くと、シーツの端を持った。
 そのまま、引っ張る。

「ななな、なぁあぁぁっ?!」
 素っ頓狂な声をあげ、委員長がコロコロとシーツのなかから転がりだした。
「なにをするんだっ?!」
 ベッドの上で梱包をほどかれたクレオパトラのごとき恰好をして、たまらず委員長が抗議の声をあげた。

 こうでもしないと、話を聞いてくれないだろ。

「は、話など聞く必要はない……っ」
 ぷい、と委員長はふくれっ面をして横を向いた。
 だが、おれは構わず続ける。

 委員長……おれの今年の抱負を聞きたいか?

「抱負? いきなり、何を……」
 委員長はこちらに向き直り、不審そうに眉をしかめた。

 おれの今年の抱負はな……『委員長以外のふたなりチンポに劣情を抱かない』だ。
 どうだ。

「っ?! 〜〜〜っっ、ばばば、ばかものぉぉぉっ!! そ、そんなものっ、抱負とはいわん!!
 そ、それに信用できるか! キミのようなヘンタイのいうことなどっ」

 たしかにそうだ。
 言葉より、現物を見た方が早いな。

 おれはしゃがみこんで、ベッドの下に隠していた箱を取り出す。

「……それは?」

 うん。健全な男子なら誰でも密かに隠し持っているエロボックスというものだ。
 ここに、おれのリビドーの捌け口すべてが詰まっている。

「ぅなっ?!」


 ぱか


 箱のふたを開いた。

 『ふたっ娘DX』『D−Girl』『月刊フタナリ』『アンドロギュノスたちの楽園』『ツイてる女の子』『I−cup&45cm女子校生』……。

 なかには無数の雑誌やムック、写真集がぎっしり詰まっていた。
 形態こそさまざまだが、ジャンル的には非常に限定的である。
 それらがまとめて、ヒモでくくられている。

「す、すごいな。よく集めたものだね、こんなに……」
 怒りや呆れを通り越し、委員長は感嘆の声をあげるしかないようだ。

 ……おれの青い性春のすべてといってもいい。
 で、今からこれを捨てにいこうと思うんだが。

「ええっ?! もったいな……じゃなくてっ……いいのかっ?!
 ここまで集めるのには、かなり苦労したんじゃ……」

 少ない小遣いを遣り繰りし、昼飯代をけずり、夏にはバイト、新年には親戚回りをした。そして、ガードの緩い書店や新古本屋を探し回ったな。同好の士に頼み込んで、もらったものも中にはある。
 だがな、委員長。最近は、もうそんなことをしていない。
 月フタも惰性で悪友からは購入してただけだ。
 いざオカズにしようとしても、その、上手く勃たなくってな。

「え……勃たない、って? もしかして、病気なの、か……?」

 違うっ!
 たしかに勃起したフタナリを見てピクリとも来ない野郎なんてビョーキには違いないが、おれがいいたいのはそんなことじゃねぇっ!!
 いいか?!
 さっき、委員長は“他のおちんちんのことなんて考えられなくしてやる”っていったがな。おれは、もう付き合った頃から委員長以外のチンコは頭に浮かばないんだよっ!! 委員長以外のチンポなんてただの尿の行き先を定める管に過ぎない!!

「ふえっ?!」

 委員長!

 おまえのチンコは最高だ!!

 水蜜桃のような亀頭が好きだ!
 勃起したときちょっと反りかえるカリ首のカーヴが大好きだっ!
 勃起した時も挿入したときも、パンケーキの柔らかさを失わない海綿体はいわずもがなだっ!!

 金玉は夜空に浮かぶ満月みたいに美しいフォルムだし、威風堂々にも慎ましやかに、その向こうにある前人未到の処女大陸を隠していて、最高だっ!!
 溌墨淋漓たる雄々しきフォルムと柳暗花明の美の両立っ!!
 委員長の本質をかくも一点に集めたこの逸物、惚れないわけがあるかっ?!

 できるかぎりの愛をこめて、おれはいつも委員長のチンコにキスをしているっ!
 できることなら、亀頭の先から根元まで、口に含んで委員長を味わいたいんだ!

 春夏秋冬、朝昼晩、家でも教室でも学食でもトイレでも風呂でもどこでもっ、いつも委員長のたぎるふたなりペニスを感じていたい! 感じさせたいっ!!

 一日の始まりは、委員長の朝勃ち仕立てのミルクコーヒーで迎えたいっ!
 一日の終わりは、委員長のきんたま枕に顔をうずめて夕の夢を迎えたい!

 一壺天の故事を引くまでもなくっ、おれのヘヴンはおまえの玉袋につまって……もがっ?!

「い、いい加減にしろ、ばかものっ!!」
 全裸のまま駆け寄ってきた委員長が、自分のチンコへの頌詩を絶叫しつづけるおれの口をふさいだ。
「け、けっきょく、おちんちんのことばっかり……本当にキミはどうしようもないっ!」
 委員長の瞳が潤んでいた。
「キミみたいなヘンタイ……委員長として、捨てておけないじゃないか……っ。
 ばかもの……っ!!」
 委員長はおれの胸に顔を埋める。
 おでこの先から、おっぱいの先まで朱色に染まっている。
 おれの股下に、硬くて熱いものが触れている。

 そのまま、おれは一糸まとわぬ委員長を抱きしめた。

 ……今度はおれが上になった。


 そして、初日の出が昇る頃。
 おれと委員長は手に手を取り、家の外へと出る。
 つないだ手には、紐でくくられたエロボックスがぶら下げられている。
 新年早々、エロ本を捨てに行くカップルというのは、まあ、世間的に見てもレアな部類に入るだろう。
 だけど元旦早々の街には、だれもいない。世界中には、おれと委員長の二人きりだった。




 【は】犯人はおまえだろ



 残りの正月三が日。
 おれと委員長は、手あかのついた言葉を使わせてもらえば、二人で寝正月を決め込んでいた。

 ベッドの上で、上になったり下になったりして、ようやく精も尽きたおれたちは、裸のままシーツにくるまっていた。

 ふと、おれは気になることを思い出し、横で寝ている委員長に話しかける。

「……ぅぅん……」
 委員長は半分とじていた瞼を開き、首を少し傾げて、おれを見つめる。

 そういえばさ、委員長……。
 今朝、ごみの集積所の前を通りかかったんだが。

「っ……、え?
 あっ、そう?」
 ぎょっ、と委員長の寝ぼけ眼が見開いた。

 ……あのエロボックスな、なくなってたよ。

「そそ、そうかっ! これで晴れ晴れとしたなっ! よかったよかった!!」

 で、だ。
 今年の古紙回収は、まだ始まってないんだが。
 どうだろうね、なにか意見があるなら聞かせてもらえないか?

「えっと……そのぅ……」
 身を小さくして、かわりに股間を半勃ちさせて、もじもじしだす委員長。


 この前のことといい、付き合うキッカケといい……。

 なんだかんだいって、一番スケベなのはコイツじゃないのか?


 今更ながらの認識に、おれは深々とため息を吐く。
 そして委員長を抱き寄せる。


 そんなおれたちが寝そべっているベッドの下には、一冊の雑誌が袋に包んで置いてある。

 表紙は水ぬれしたみたいに、しわくちゃになっている。

 『月刊フタナリ 秋の巨根特集号』。

 判読しづらいが、そう読める。

 おれと委員長が付き合い始めるキッカケになった雑誌である。

 どうしても、これだけは手放せなかった。


「はぅぅ……」
 腕の中で丸くなり、おでこをぴたりと胸におしつけてくる委員長。


 ……ああ、もう。

 本当に、手放せない。



(終)




08/01/11 SSを頂きました。




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