注意
この作品は佐藤さんと愉快な仲間たちのキャラクターを用いた二次創作です
公式設定と異なる可能性があります
以上をご了承の上お読みくださ




お礼参りSS

 桜の咲きつつあるその日、その学校でも日本各地と同様に卒業式が執り行なわれた。少年少女、そして教員や職員と父兄の涙がそこにいくらかの輝きを添えたのもありふれた光景である。ならば、その後起こった記録に残らぬ些細な事件など、そのありふれた出来事の一部と捉えて構わないだろう。

 卒業式当日の夕方、学校の裏手にある駐車場に姿を現したのは高橋という女性教諭である。校内でも有数の豊満な身体の持ち主で、全身がぽよっとした柔らかい肉で構成されているのが見るだけでもわかる。その大きな乳房などは足元が見えないのではと思えるほどだ。またその体に似つかわしい穏やかな空気を纏っていた。夏の空にふわふわと漂う一塊の雲のような人物である。
彼女の姿を認めた数十の小さな影が、待ってましたとばかりに彼女の進路を塞いだ。その半分程――ふたなりの全員――はペニスを隆起させ、既にコンドームの先端を先走りで膨らませている。この一年間彼女が受け持った学級の面々である。昼間の教室で既に別れの挨拶が済んでいる以上、こんな所で待ち構える者の目的は限られている。打ち上げの席を共にしようという誘いでないなら……お礼参りという奴だろう。それを告げるべく、一人が意気高く、ぶるんとふたなりの割には幾分小さなペニスを揺らしながら歩み出た。学業や身体能力に秀でたものはないが、その明るさ――あるいは騒々しさ――でムードメイカーだった佐藤という少女だ。
「先生にはお世話になったけど、なんかもうヤられっぱなしなのが気に食わない!」
「怒られたのは自分が悪いんじゃなくて?」
「今はツッコむだけ無粋ってもんよ」
非常に長いペニスの上品な少女、二条と巨大なペニスのメガネの少女、三城のやり取りを五月蝿いと怒鳴り付け、佐藤は続けた。
「ということで悪いけどせめて声のひとつくらい上げさせてみせるわ!この人数を全部さばけるもんならやってみなさい!」
 佐藤が振り返り、後ろにいる同士に目配せすると、高橋を囲むように展開した。
「レディ!ゴ――」
再び高橋に向き直り高らかに号令をかけようとしたその瞬間、彼女らは後ろ髪を風に撫でられた。
そうとしか感じられなかったが、風の吹き抜けた後、その場にいた反抗者達が一人を残して崩れ落ちた。やったのは同級生から常に“委員長”と呼ばれる泣きぼくろが印象的な少女、片倉である。その小さな体で“同士”達の背後を走りぬけつつ、瞬時に躰の一部、あるいは全部の自由を奪うツボを的確に突いてみせたのである。
躰の痺れに耐え切れず膝を折った佐藤は後悔していた。そもそも片倉は陰で先生の腰巾着などと呼ばれるような人物なのだ。実際には本人が頑なに規律や礼儀を遵守し、級友にもそれを求めているだけで、教師が特別彼女に目を欠けているという事実はないのだが。高橋を襲撃するという提案にそんな彼女が賛同したのは完全に予想の外だったが、卒業を機に態度を変える気なのかと思い、好意的に解釈したのである。震える腕で躰を支え、裏切り者への呪詛を吐くつもりで委員長の姿を探そうとした。
「すまない」
謝罪の言葉に地を這う全員が虚を突かれた。片倉は常に規律に従い行動してきた。ルールの過剰とも言える執行にも迷いはなく、後ろめたいことなど何一つ無いと考えている。自分が間違っていないという強い信念がある以上、彼女が謝罪の言葉を口にする姿など殆ど聞いたことがないのだ。
驚くべき言葉は更に続けられた。
「考えたが、やはり数に頼り一人を襲うというのは間違っている様に思う。それに訓練されていない集団での行動はむしろ障害になる。だから……私が一人でやる」
語りながら片倉は歩を進めた。倒れた少女達の驚きは最早留まるところを知らない。彼女が代表を名乗ったとしても、これではどう見ても一騎討ちだ。卒業式の空気だとか、級友に唆されたとか、そんな言い訳も許されない、ただの反逆行為である。規律に従ってきた“委員長”が、恩師に牙をむくと宣言したのだ。
普段どおりの不機嫌そうな顔からは、彼女の内の葛藤はわからない。ただ、常時怒張しているふたなりの割に小ぶりなペニスの先では大量のカウパーに満たされた袋がいつになく大きく膨らんで揺れていた。
そう、彼女は興奮しているのだ。強者と本気で立ち会うことに。この機を逃せば闘う為のほんの僅かな理由も用意できないからこそ、今この時に規律を裏切る決意をしたのだ。
規律と礼儀の鎧に包み隠されてはいるが、煮えたぎる闘争心と力への渇望こそが彼女の本性なのだということを級友達は知った。
「勝てば皆の勝利。負けたなら私一人の責任。そういうことにしてくれていい。どうか許してくれ」
 そう言って少女はまっすぐに高橋を見据え、これまでより強い意志を込めて言葉を紡いだ。
「そういうことです。もとより不義は承知の上の行動。どうか受けていただきたい」
「身体へのダメージを最小限に抑えながら自由を奪うなんて、成長してくれて先生嬉しいわ」
 高橋はここに至るまで驚いた素振りもなく、いつもと変わらぬ穏やかな笑顔を保っていた。その彼女がようやく口を開いたが、得られたのは答ではなかった。
片倉はかつて、級友を大人しくさせる為に肉体へのダメージを狙う行為を躊躇なく繰り返していた。それを踏まえての賛辞である。彼女の家でもある道場では「痛くなくては覚えぬ」という教育方針をとっているのだが、現在の教育現場でそれを奨励するわけにはいかず、幾度か注意されていた。
「先生……」
 今はそんなことを聞いているのではない。そう反論しようとした時、高橋の目に見たことのない光を感じ、口を噤んだ。
「せっかくあなたが成長を見せてくれたんだもの。成長の度合いを確かめて欲しいと言われてしまったら断れないわよねえ」
 昨日とだって、今朝とだって変わらない柔らかな口調。なのに、いつもとは違う、見たことのない、眼に見えない凄みが佐藤達にすら感じられた。
 ほんの僅かな時間だったが、片倉の口角が上がった。
「感謝します」
「いいのよぉ。さぁ、来なさいな」
 片倉が施したのは、ほんの一時自由を奪う技術だった。だから一旦地を舐めた級友の全てがある程度は身体の感覚を取り戻し、片倉と高橋を視界に収められるような体勢をとることに成功していた。
しかし、高橋の言葉が終わったか否かという瞬間、動き出した少女の姿を追えた者は皆無だった。
地を這うような低空を獣のような速度で駆け、高橋に迫る。大きな乳房が視界を塞ぐこと、機動力では自分が勝ることを考えれば下から攻めるのは当然だろう。勢いそのままにロー、あるいは股間へ一撃を叩き込むつもりだ。
だが、高橋の動きを認識した脳が警笛を鳴らす。胸が邪魔で出来るはずのない下段突き。僅かな体重移動がそれを教えている。
フェイント。
ブラフ。
否。
これは、このままでは、打ち込まれる。
急制動をかけるも、速度がゼロになった時には既に高橋の射程だった。筋力を総動員し、無理矢理にバク転で距離をとろうとした所で風切り音が聞こえ、冷たい風が感じられた。
続いて場違いな小さな水音がしたのを聞きながらバク転を数回繰り返す。距離をとった所で気がついた。自分の亀頭が露出している。先端を切り落とされたせいでめくり上がったらしい。先程の冷たい風はその為で、水音は精液袋が地に落ちた音だろう。
単にコンドームを切り裂かれたのならそう驚きはしなかったが、事実は遥かに恐ろしい物だった。切り裂かれたのではなく、精液袋の根元を切り落とされたのだ。固定には程遠い条件にあった柔らかなゴムを、である。今になって冷や汗が噴き出る。
「下段はおすすめしないわ」
 高橋は未だ抜き手を放ったままの体勢だった。一見すると腕が乳房を貫通しているようにすら見える、妙な姿だった。驚嘆すべき柔らかさを持つ乳房は下方への打撃を邪魔することなく変形していたのだ。
「目測がはずれたらクリーンヒットしちゃうかもしれないもの」
 攻撃のチャンスを見逃すことはしない、そういうことだ。少女は息を飲んだ。
これは本当に純粋な警告なのだ。実際に彼女の攻撃がクリーンヒットしたなら、重大な怪我を負う可能性がある。それが表沙汰になれば少なくとも教職を追われることは間違いないだろう。先刻の貫手も、社会的地位を捨てる覚悟で放たれたということだ。自分の躰と彼女の未来を思うなら、迂闊な下段攻めを自分に許すことは出来ないだろう
「遅ればせながらルールを決めましょう。敗北条件は意識喪失、戦力喪失、戦意喪失。意識喪失以外はあなたが判断すればいいわ。加えて、あなたの勝利条件として私の正中線への有効打、それと私に声をあげさせること。さっき佐藤さんが言っていたしね。これでどうかしら?」
 舐めていると考えるべきではない。相手は己を圧倒する力の持ち主なのだ。全力を出した姿を見たことはないが、恐らくそれだけの差があると判断されているのだろう。
「是非もありません」
 息を吸い、吐き、再び構えをとる。下段が駄目ならまともに挑むしか無い。それに時間もないのだ。他人に見られれば問題になる。
 一息で間合いに飛び込み、拳足を繰り出す。次々と、次々と。
 だが、その全てが高橋の手で阻まれた。
 そもそも体格が違いすぎるのだ。少女がダメージを与えるほどの距離は、高橋にとっては必殺の間合いと言って差し支えない。そのプレッシャーを感じつつ、攻勢に出るだけで精神力が削られていくのがはっきりと感じられた。
 そんな攻防を1分ほど続けた頃、高橋の動きに変化が見られた。少女の攻撃を幾度か捌き、受け止めるたびに一発といったペースで、軽い打撃を繰り出してくるようになったのだ。
 それは、ほんの軽い攻撃だった。せいぜい体に触れたことが分かる程度のもので、ダメージすら狙っていない。言わば寸止めだ。しかしその気になればいつでもダメージを与えられるということを示している。少女にとってはただただ、屈辱的だった。
 周囲でそれを観戦している者の目には、攻防のほぼ全てがまるで理解出来ないものだったが、それでもまるで勝機が見いだせないことは察せられる。そして高橋が肉体にダメージを与えずに、心を折ろうとしていることも。
勝利の余地のない所まで追い込まれるのと自ら敗北を認めるのとではどちらが辛いのか、どちらが次に繋がるのか。佐藤にもヤマモトにもわかりはしなかった。
仕切り直すつもりか、一歩下がった少女は次の瞬間、高く飛び上がった。飛べば重力に縛られる。それが当然だ。だが彼女は違った。空中で拳足を繰り出し、更にフェイントを織り交ぜて高橋の拳を誘い、それを支えにして空中にとどまっているのだ。
高橋の眼前で少女が舞い続ける光景はどこか滑稽で、例えば小人が巨人を翻弄しているように見えなくもなかった。しかし有効打を打てるほどのチャンスは生まれず、結局のところ状況が好転した訳ではない。
そしてとうとう、少女は文字通り捕まった。足首を掴まれたのだ。高橋の手をひとつ塞いだと言えなくもないが、逆さ吊りでそんなことを言っても負け惜しみにもならない。これで終わりだと二人を取り囲む者達は思った。高橋すらもそう考えたかもしれない。
だが、それこそが少女の狙いだった。
ぱん!と銃声のような音が響き渡った。
それは射精音。少女の小さなペニスに秘められた力が、驚異的な速度で精液を打ち出したのだ。意識的にコントロールされたペニスは高橋の眼球を捉えており、認識した以上は回避せずにはいられなかった。
高橋にとって今日初めての、強要された行動だった。わずかに着弾点をずらし、眉間に近いポイントに精液を受けた頭はまるで殴られたかのように反り返った。水鉄砲などとは呼べない。まるでウォーターカッターのような射精である。
巨根の持ち主なら射精を攻撃の手段とするのは珍しいことではないし、高橋が貧根相手だからといって想定していなかったわけでもない。ただ、予想を凌駕した速度が彼女の意識をほんの少し逸らしただけだ。だが、闘争の場でそれは致命的と言える。
高橋に生じた隙を逃さず、少女は高橋の手首に一撃を与えることで、自由を取り戻した。 体勢を整えながらの自由落下。恐らくはこれが最初で最後のチャンスだ。両手から着地し、全身のバネを用いた蹴り。無理矢理に衝撃を吸収させられ、尚且つ伸びろという脳からの命令に体がミシミシと抗議の声をあげるが問題ではない。
この一度を果たせば休ませてやる。
さあ動け。
伸びろ。
この圧倒的上位存在の急所へ、渾身の一撃を。
ぐんと伸びた足先蹴りが高橋の股間へ迫る。いくら少女が小柄とはいえ、その身長が高橋の脚より短いというわけはなく、着実に爪先が距離を縮めていく。自分の行動なのにも関わらず、その様子はまるでスローモーションのように見えた。
だが、その攻撃が高橋に届くことはなかった。高橋が跳び上がったのだ。周囲で見守る佐藤達から見れば何が起こったのかは明白だったが、片倉にとっては完全に予想外であり混乱せずにはいられなかった。しかも体を投げ出すように蹴りを放った結果まるで自由が効かず、仰向けに倒れるような状況である。
「ふきゅっ」
少女が腰、次いで脚を地面に叩きつけた直後、高橋の桃のような尻が眼前に降ってきた。胸を圧迫されて声が漏れる。高橋は跳んだと同時に体を反転させており、顔は見えない。更に、脚で腕まで抑えつけられており、上半身の身動きを完全に封じられた。
とはいえ、ここで降参するわけにはいかない。目測もなしに蹴りを放とうとした時、寒気が体を通り抜けた。彼女には知れる筈もないが、それは高橋が少女のペニスに目を止めたのと同時であった。
「ひっ!?」
 先端を失い、幹だけを覆っていたコンドームが引き抜かれ、思わぬ刺激に声が出てしまった。どうやら、高橋は抜き倒すことで体力を削り落とすことにしたらしい。容易くはやられまいと耐えぬく覚悟を決めたが、その覚悟はほんの短い時間で砕かれた。
「くっ!んっ!んぅっ!ふっ!くぅっ!んぁっ!ぁあっ!あああっ!ああああっ!あっ!あっ!ああっ!」
 最初の幾らかは声を抑えたものの、あっという間に快感に耐え切れなってしまった。あられもない喘ぎ声を上げ続けるという彼女からすれば耐え難い姿を晒すこととなったが、今の快楽に溶けた脳では情け無いと感じることすら困難だった。
 恐るべきは高橋の手技指技である。どういう技術なのか、ペニスに触れた拍子に射精が始まるほどの魔技である。平然と教え子のペニスを撫で、扱き、玉を揉みほぐす。射精を強制させながら普段と同じ笑顔を浮かべる姿は、聖女と淫魔を足して割ったようなオーラを放っていた。
 空高く吹き上げられ、雨のように降ってくる“委員長”の慎ましやかな精液を見ながら、戦いを見守っている級友は既に彼女の勝利を諦めていた。高橋と並ぶ恐怖の象徴の口から吐き出される聞いたことのない声に驚き、多くの者が多少の興奮を覚えた。中には高橋の仕置きを思い出したのか、通常時と比べて随分とペニスを縮こまらせている者もいる。
 片倉の喘ぎ声――あるいは悲鳴か――が永遠に続くような気配さえあったが無論そんなことはなく、少女の小さな玉は一分ほどで空になったらしい。精液や体力と同時に肺の空気まで搾り取られたようで、声も矢継ぎ早の浅い呼吸に紛れてわずかに漏れるだけという痛々しい様相である。
 級友達の知る限り“委員長”のペニスは誇張抜きで四六時中勃起しており、萎えた状態など見たことがなかった。それが今眼前に晒されている。驚愕の光景だった。
責めも十分と考えたのか高橋が手を放すと、萎えたペニスは地球に引かれるままへたりと頭を下げた。意識は保たれていたが、荒い呼吸を繰り返すのみで拘束を逃れようともしない。そのまま数十秒待つも降参を口にしない少女に痺れを切らしたのか、高橋は立ち上がろうとした。打撃の寸止めあたりで負けを認めさせるつもりだったのかもしれないが、ここに来て片倉は完全に高橋の想像を凌駕した。
力の一切を失いぐったりと伸びていた足が一気に跳ね上がり、高橋の首へと喰らい付く。そのまましがみついた少女の姿は柔らかな肉に埋もれ、まるで巨木に飲み込まれる人工物といった風情である。だが飲み込まれたとしても、自然に存在しない剛性を持つ物体が巨木に傷を負わせることはある。
 狙いが読めなかったのか、高橋は首から片倉を下げたまま立ち上がった。絞め技に展開出来る形でもないし、力尽きかけた足を引き剥がすことは容易いのだからそう間違った判断ではない。ただし通常の戦いならば、だ。
 高橋の身体の伸びに引き上げられた少女は、頭をスカートの中へと潜り込ますことに成功した。当然目の前には股間。大きなクリトリスが下着を膨らませ、枇杷や李でも入っているかのように見えた。口を大きく開き、思い切り歯を立てる。
「あんっ♪」
 さしもの高橋もクリトリスに歯が喰い込む刺激に声を抑えることは出来なかった。そしてそれは委員長の勝利条件でもある。つまり――
「ぃいやったぁああっ!!委員長!よくやった!やると思ってたわ!ほらみんなせーの!わーっしょい!わーっしょい!」
 高橋が勝利を称えるよりも、委員長が勝利を宣言するよりも早く、二人の姿は周囲から押し寄せた人並みに包まれた。と思いきや、すぐに委員長の胴上げが始まり、消耗しきって脱力した身体が上へ下へと振り回される。非難めいた言葉が紡がれたようだが、蚊の鳴くような声では誰にも届かず――あるいは誰も耳を貸さず――上下運動は何度も繰り返された。高橋までが微笑ましいものを見るような目で少女達を見つめている。
「はいはい。そろそろ終りにしなさい。他の先生方や地域の方々に見られたら大変なんだから」
「はーい」
 しばらく状況を笑ってみていた高橋がそう声をかけると、意外にもあっさりと佐藤が応じ、他の面々もそれに従った。全く動けない委員長に佐藤とヤマモトが肩を貸し、半分引きずるように歩いて行く。
「ちょっと待て……どこへ連れて行くつもりだ……」
「決まってんでしょ。打ち上げよ打ち上げ。打ち上げ。解散会。お別れ会」
「名前は何でもいいけどね」
「何で……私が……」
「何言ってんのよ。自分で言ったんじゃん。委員長の勝利は私たちの勝利だって」
「ぐっ」
 正直、それは高橋に挑むための方便でしかなかった。だいたい、自分が何を言ったところでそれをそのまま受け入れられるなんて思いもしなかったのだ。今まで規律から外れた級友の行動をことあるごとに咎め、厳しく正してきた自分なのだ。その結果として疎まれるようになっていったが、自分としては間違っているつもりはなく、更に頑なになるばかりだった。
 だから失うものなんてない。そう考えていたから、佐藤から高橋襲撃に誘われたことも意外だったし、加えて彼女らをねじ伏せた以上、最早和解の可能性は皆無だと考えていた。  それが、この扱いである。能天気な佐藤に限らず、皆が自分の勝利を己のものとして喜んでくれている。
正しいとはどういうことなのか、不意に信念が揺らぐ。
一切の規律違反を許さず、腕力で皆を縛り続けた自分。秩序と引換に自由と笑顔を奪ってきた。
対して佐藤達は時折ルールや礼儀から逸脱する。だがそれは思えば些細なことで、仕置かれたとしても最後には笑顔でいるのだ。
些細なことだとしても、規律から外れることが正しいとは考えられない。それでも――頭では納得出来ないが――笑顔の級友達に囲まれている現状が、心地良く感じられるのだ。 ふと道場に掲げられた克己という言葉を思い出した。
師匠――両親――はかつて語り聞かせてくれた。人は善であろうとしなければ悪に堕ちる。なればこそ人は己を律せねばならぬのだと。
それを信じるならば、人間とは本質的に悪なのだろう。全ての人が己を律することがまず不可能だからこそ、世から悪は消えないのだ。初めて克己という言葉の意味を聞かされた夜、布団の中でそう納得した。そして、世がそうあるのならば自分の手の届く範囲でくらいは悪に堕ちんとする人々を善たらしめんと幼い決意を固めたのだ。その決意が間違っているとは今も思わない。だとするならこの喜びは己の未熟が故かもしれない。今自分に肩を貸し、取り囲む級友達が悪には見えないのだ。
ふと、一つの考えが浮かんだ。全ての人が自分や師匠のように善たらんと厳しく己を律し続けることは、恐らく出来ない。でも、大悪を為さず、小悪を漏らすように生きることは出来るかもしれない。無意識であったとしてもそのように生きる者こそが通常の範囲で善き民と呼ばれるのではないだろうか。
和を以て貴しと為す。授業でならった言葉を思い出す。佐藤達の行動は世を乱す程のことではないし、大きな不和や争いを招くこともないだろう。自分の頭では不思議に感じるのだが、どういう訳か笑顔に帰結するのだ。あらゆる違反を片端から咎める自分は、むしろ事件を不和へと導いていたのではないだろうか。今にして思えば、高橋は何かをしでかした者を必ずしも責めなかった。多少の不義を見逃しても後の和につながることを確信しているならばそれこそが正義となるのだろうか。
「ほら萎えてんだからちんちん仕舞えよ……わー人の萎えちんなんて触ること無いからなんかちょっと興奮するかも」
「ぁん!」
声を出すのも辛い疲労困憊した身体だったが無意識に喘ぎ声が搾り出された。魂が思索の旅に出ていた委員長だったが、その体は今もじりじりと運ばれている。そして公共の場においてはペニスにはきちんとコンドームを付けておくか見えぬようしておくのが法である。家庭はもとより、学校では殊更厳しく教育される。それに従い、佐藤が遠慮なしに萎え切った性器を掴み、下着にねじ込んだのだ。高橋に翻弄されたペニスと玉はひどく敏感になっており、もう勃起すら出来ないにもかかわらず快感を脳に送り込んでくる。
その拍子に左方から鋭い視線を感じる。そういえばヤマモトは佐藤に恋慕しているのだったか。恋愛感情というのはよくわからないが、彼女はしばしば三城や笹山に嫉妬らしき目を向けている。好意を向けられている佐藤だけは何故かそれに気付かないようだが、なんとなく彼女らのやりとりは一つの完成されたコミュニティを感じさせ微笑ましく思えたものだ。その場に自分が混ざっている様子を想像するとひどく違和感を覚えるが、なんだか愉快な気持ちになった。
いや、想像するも何も、今まさにそういう状況にあるのだ。それに気付くと、いよいよおかしくなった。一度そう思ってしまうともう唇が歪むのも抑えられず、とうとう声を出して笑い出してしまった。
ああ、声を上げて笑ったことなどいつぶりだっただろうか。学校では未だかつてなかったかもしれない。
当然、そんな珍しい姿を目撃した誰もが仰天して言葉を失った。
「くくっ……ふっ……あっはははははは……」
「な、何笑ってんのよ」
 我を取り戻したヤマモトが声をかけてきた。質問を認識してもなお笑いが止まらない。 「いや、ふふふ、まるで友達みたいだと思ってな」
 道場の同門など、いくらかの付き合いがある者はいるが、友達と呼べる者はいなかったし、欲しいとも思わなかった。ところが、思わず漏れた言葉が、自分の本当の気持ちをあらわにした。友達が欲しい。自分にそんな願望があったことにひどく驚いたが、その言葉への返答には更に驚愕した。
「はあ?あんた友達じゃないつもりだったの?」
「そうよ。ちんこ掴んだ仲なのに」
 友達だと、思われていた?いつもルールを守るよう暴力的に強制してきた自分が?
「それ今日じゃない!さっきじゃない!」
「裸のちんこの付き合いって奴よ」
「殆どみんなそうじゃないの!だ、だいたい突き合いって何よ!握っただけじゃない!」
「付き合いから何想像してんのよ……ちんこ二本もあるとやらしいったら」
「かかか関係ないじゃない!」
「きっと包茎の分表に出て来なくてこんなムッツリになっちゃったのね」
「OK。表出なさい!」
「ここより表ってどこよ」
「キーッ!」
 佐藤とヤマモトが自分を挟んで始めた漫才を聞き流していると友達という言葉がじわりと胸に染み入ってくるのを感じ、迂闊にも喜びで涙がこぼれそうになった。と、後ろから呼ばれたような気がして首を廻す。相変わらずの笑顔でいる恩師の唇が動き、声は発しなかったようだが「せんせいによろしくね」と読み取れた。
力の入らない身体が尚更脱力する。彼女が今この状況で先生と呼ぶからには、彼女の同僚のことではあり得ない。まず間違いなく師匠のことだろう。そして、それを先生と呼ぶということは、同門の姉弟子だということだ。道場で見かけたことこそないが、むしろそれは相当の高弟であることを示している。そういえば高位に高橋という名札があったような気もしてきた。とはいえ、日本でも上位の人数を誇る苗字である。確かに目にしたとしても実際の知己だと思えなかったことを責めるべきではないだろう。
「どうしたの?」
 振り向いたまま唖然としていた自分に気づいた三城が佐藤の向こうから声をかけてきた。自分が如何に無茶な挑戦をしていたかを改めて自覚したと答えるのは少々恥ずかしかったので、誤魔化すことにした。
「……先生に挨拶をと思って」
「あ、それもそうね。ほらみんなー!最後に先生に挨拶するわよー!」
 なるほどそれは道理だと、引きずられるように運ばれていた委員長に合わせてゆっくりと歩いていた一同が足を止めて振り返る。
「ほら、委員長!」
 みなまで言わずとも、音頭を取れという意味なのはわかった。今までずっとやってきたのだから。
「気を付け!礼!先生今までありがとうございました!」
「はい。みんなもありがとう。さようなら」
 言っている自分がちっともしゃきっとしていないが、声だけは凛々しく響いた筈だ。皆も口々に謝意や別れの言葉を叫んでいる。
責務を果たした片倉は残った力を振り絞って声を張ったせいでまた身体が崩れたが、再び佐藤とヤマモトが支えてくれた。何でもないことだと言うように笑顔を向けてくれる。ヤマモトはわざとらしくため息をついたが、それが照れ隠しだということは片倉にも確信出来た。
「じゃ、先生!私達精JELLY屋(セイゼリヤ)で打ち上げしてるから来れたら来てね!」
 最後に一際大きな声で佐藤がそう告げ、再び揃って歩き出した。初めて行き先を聞かされたが、今の委員長は素直に同席することに疑問を感じなくなっていた。だが、
「ファミレスパーティ初参加の委員長には今までに開発されたドリンクバー最マズブレンド候補達をめいいっぱいごちそうしたげるわ!まずは“黒い三連星”から!」
何やら恐ろしげな響きの言葉に思わず逃げることを考えたが、身体は言うことを聞かず、引きずられるばかりである。友好関係の構築は、まず目前に立ち込める暗雲に突っ込むことから始まるらしかった。







おまけ1

 3月下旬のある日、佐藤たちが卒業した学校の会議室でのことである。高橋教諭をはじめとした、先日卒業した子供達を担任していた教員と教頭が並んで席についていた。対面にいるのは卒業生の多くが来月から通うことになる学校の教員達。なんのことはなく、今まで担当してきた者からこれから担当する者への情報提供を目的とした場である。
 そもそも大して問題児がいたわけでもないので滞り無く議事は進んだ。一つの学級の担任と生活指導を兼ねていた高橋が淡々と個々の生徒の特徴を述べていき、向かいの教員達が時折質問を挟みながらも、ほぼ相槌を打つだけで時間が経っていく。
 何の変哲もないこの場においてただひとつの異様は、進学先の一人の教諭、生活指導を担当する人物であった。
卒業側の先頭は教頭である。それに対し、進学側は教頭が同席しているのにも関わらず、その生活指導担当教諭が先頭に座っている。正確には卒業側の教頭の斜め前方に、である。つまり、進学側の列の二人目から若干離れた席に付いていて、全体を見ると一人飛び出しているような構図になっている。
無論、いじめられたり疎まれたりしているわけではない。単に、体の幅が人一倍大きいのだ。いや、幅だけではなく厚みも、縦にも並の人よりかなり大きい。
肥満(デブ)ではない。よく絞り込まれたとてつもなく巨大な筋肉がその肉体を構成しているのだ。
パンツやスーツからは子供一人ほども太さがある腕脚の筋肉が浮かび上がり、隠しようのない首はまるで野牛のようだ。また、股上を深く作られた特注のパンツも無理矢理収めた玉のせいで人が潜り込んで丸まっているかのように大きく膨らんでいる。そのような肉体の上に凛とした美しい顔が乗っているのが少々滑稽に見える。いかにもガッシリとした躰の中でポニーテールに結われた髪だけが柔らかく揺れていた。
何より目を引くのはその胴体である。大きな乳房の上でブラジャーやブラウスに抑えつけられた乳頭のペニスが窮屈そうにペットボトルのような膨らみを作っているのはまだいい。ブラウスの中心がボタンも弾け飛ばんばかりに異様に大きく膨らんでいるのだ。その様子はまるでアジアのどこかの街角で吊るされ焼かれている肉塊をそのままいくつか放り込んだのではないかと思えるほどである。
改めて言うまでもなくそれは彼女のペニスによるものだが、これほどのサイズならば隠す者はいない。それを無理に押し込んでいるのは、単に彼女の主義によるものだ。曰く、「教育者たるもの無闇に肌を晒すものではない。劣情を誘い学業に支障が出たら何とする」とのことだ。だが実際には規則としてそう決まっている訳ではない。故に他の巨根の教員は当然露出しているし、また子供達も同様であるので性欲抑制にどれだけの効果があるかは疑問である。隠されれば暴きたくなるのが人心というものなので、むしろ彼女の身体を見たくてたまらないという空気が一部で漂っているのだが、どういうわけか彼女は気付いていない――自分の主義と行為の効果に確信がある――らしい。
ちなみに、今にも胸元から飛び出しそうな彼女のペニスはまるで勃起していない状態である。言うまでもなく、上記したような主義を持つ彼女であるので、自らが興奮している姿を晒すなどもってのほかと考えているのだ。この点については流石に教員の共通認識と呼べるものだが、過敏な身体を持つふたなりには相当な困難であることも事実で、完遂されているとは言い難い。精神的なことならともかく、そもそも生理的な反応である勃起のコントロールなど常識の外なのだ。そのため彼女の赴任直後にまず彼女が非勃起状態であることを疑う者が表れた。
しかし許可を得て彼女のペニスを検めようと服を脱いでもらうと、ペニスはそのまま垂れ下がり、確かに勃起している状態ではなかったという。結果彼女の主張の正当性は認められたのだが、今度は不感症説が浮上している。これも確かめたいとある同僚が勃起したところを見せて欲しいと彼女に求めたが、学び舎で勃起するなど云々、恋仲でもない者にそのような姿を見せるなど云々と説教をされてしまい、諦めざるを得なかったという。 ところで、一般に知られるように、巨大な男性器を持つ者は通常の男女と比べて強靭な体幹を持つ。丸太や土管の如きペニスを勃起させた状態であっても揺らぎなく歩いて行く姿はどこでも見られるものだ。また、時に彼女らはその男根を振り回しすらする。
だが、実はそういった行為は驚くには値しないのだ。通常を超えた能力を発揮するには通常を超えたトレーニングを必要とする。腕力を強くするには腕の自重に加えて負担をかけなければならないように、だ。ふたなりがペニスを振り回すことが出来るのは、腕あるものが腕を振り回せるということと変わらないのである。常に錘を付けていれば当然身体はそれに対応して強くなるが、錘をはずせないのではその真価は発揮できないということだ。ボクサーが常人を超えた速度で拳を繰り出すために大変な努力を必要とするように、真にその肉体を操るには相応の訓練が必要なのである。
その点彼女はその肉体を完全に支配下に置き、その能力を如何なく発揮するためのトレーニングを積んでこの身体を手に入れたのである。体質に恵まれて加速度的に筋肉を手に入れた者やボディビル趣味で日常生活に支障をきたすほどの筋肉を得た者とは一線を画す。その身体能力は超人と呼んで過言ではない。その能力と毅然とした態度、そして正義感から若くして生活指導を任されているのだ。
「これで特徴的な子の報告は以上です。質問などお有りでしょうか?」
 元担任がそれぞれの学級の報告を済ませたところで進行を務めていた高橋がそう問いかけるも特に応える者はなく、教頭が終了を宣言した。
この後は通例の懇親会である。三々五々席を立ち、同僚や馴染みの者と言葉を交わしつつ部屋を出て行く。高橋も同様に、巨体を静かに進める教諭に声をかけられた。
「高橋せんぱ……失礼しました。高橋先生。近い内に一度御指導願えませんか」
「いいわよ。いつでも連絡を頂戴な」
 本当は高橋の指導についてもっと厳しくていいのではないかと言いたくもあるのだが、あまり仕事のやり方に口をだすものではない。同門の姉弟子であっては尚更だ。心中で小さな溜息が出る。だいたい、本当に重大な問題児が進学してきたことはないのだから仕事ぶりは適当の範疇なのだろう。歩みを進めつつ、新たな教え子のやってくる新年度を思った。







おまけ2

 桜が満開に近づくある日、佐藤、三城、笹山、ヤマモトは揃いの服で歩いていた。みなまで言わずとも解るだろうが、学校の制服である。彼女らは本日より通うことになる入学式に向かっているところなのだ。
誰もがどうにも制服を着慣れないらしく、くすぐったいような表情を浮かべている。あまり表情を崩さない笹山までがどこか上気しているようだ。そのせいか巨大なペニスを持つ三城と笹山は勃起しているペニスを掲げながら歩を進めている。実は佐藤とヤマモトも同様に勃起しているのだが、スカートが膨らんでいるだけである。初日から教師や上級生に目を付けられてはかなわないと、校則遵守どころか更にスカートの丈を長くしていたのだ。流石に校則程度の長さならスカートに収まらずに露出していた筈だが、前を歩く二人(長大なペニスの持ち主が後ろでは前を歩く者と大きく距離が開いてしまうので、自然とこの4人ではこういう並びになる)の丸太のような肉棒を見ては、それすら不安になってくるというものだ。
貧根の二人がいつも通り理不尽な怒りをぶちまけてやろうかと考えたところで、見覚えのある人影が目に入った。
「あ!委員長じゃん!おはよー委員長―」
「ん……おはよう。でももう委員長ではないぞ」
「細かいこと言わない!」
 卒業式の日に遅ればせながらまともに交流を持った委員長だが、友人としての距離を測りかねているらしく少々歯切れが悪い。
 せっかくなのでと一緒に歩き出す。他愛もない会話をしていると、僅かに笑顔を見せたりもするが、どこかそわそわしている。
と、意を決したように佐藤の目を見つめ、語りだした。
「お前に……お前達に忠告しておきたいことがある。と……友達として」
(友達って口にするたびに照れる委員長可愛いなあ……ちょっと興奮するわ)
(はっ!アレは佐藤さんがちょっと興奮してる顔!おのれこのぽっと出の泥棒猫……)
 佐藤とヤマモトがそんなことを考えていたかは不明だが、委員長は集中力の若干欠けた気配を感じ取った。
「聞いているか?」
「「もちろん」」
 佐藤とヤマモトの声が揃った。返事はしなかったが三城と笹山も顔をこちらへ向けている。
「あのだな……これからは学校内では悪ふざけは極力……いや絶対にするな」
「ん?なんで?」
 大きく羽目をはずすつもりは毛頭なかったが、委員長は妙なほど真剣だ。
「私達がこれから通うのは何の変哲もない公立の学校だが、生活指導の先生は非常に厳しい方だ」
「ふーん……」
 佐藤達はそう言われてもどうにもピンと来ない。これからは今までとうって変わって大量の明文化されたルールに縛られることになるので当然指導される内容も増えるわけだが、それを経験したことのない者に想像しろというのも酷な話だろう。
「真面目に聞け。あの方は私の十倍頑固で」
「え」
「百倍容赦なく」
「ええっ!?」
「千倍強い方だ」
「ええええっ!?」
 佐藤やヤマモトどころか、三城まで目を点にしている。皆の前で披露した自分の力ですら彼女らにとっては相当なものだっただろう。千倍という数字に考えが及ばないのか、歩みすら止めてしまった。
我を取り戻した三城が問う。
「な……なんでほんの少し前まで小学生だったのにそんなこと知ってるの?あ、もしかして兄弟が?」
「そう……これから通う学校の生活指導教諭は……私の姉だ」



おわり



11/06/14 SSを頂きました。




動画 アダルト動画 ライブチャット